ネットワークセキュリティに関する調査・研究を行っています。今のところ迷惑メールに関する話題が中心です。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消せます。
サービス汚染行為の解決を難しくしている要因の一つに、匿名性があると考えられます。

行為の匿名性は、次の3つの要因によって高められます。

(A)プライバシー権
(B)行為の間接化
(C)大衆化

プライバシー権(A)のお陰で、サービス汚染行為者の多くは匿名性を得ています。プライバシー権があるため、よほどの場合でない限り行為者を特定するようなことはできません。

行為の間接化(B)は、コンピュータネットワークであればプロキシによって実現されるものです。行為を間接化されると、行為を直接仕掛けてきたマシンの使用者が加害者なのか、単に中継しているのかが分からないため、匿名化がなされます。

大衆化(C)は、行為者を取り締まったりブラックリストを作成する立場にある者の作業効率を下げます。そのことが間接的に行為者を匿名化することになります。

サービス汚染行為の多くは、大衆化(C)された行為です。このため、間接的に行為者が匿名化されてしまいます。


匿名性は次の二つの側面でサービス汚染行為を解決困難にしています。

(i)行為の取り締まりができず、抑止が困難になる
(ii)予防策を打つことが困難になる

ただし、匿名性がない場合でも止める事が難しいサービス汚染行為もあります。

新たに、以下のものもサービス汚染行為として挙げておきます。

(13)違法情報の公開
法律で禁止されている情報の公開や交換を行うことで、法律によって守られている社会機能を侵害する行為です。これには例えば(9)のような著作権を無視したコンテンツ交換も含めて構わないと思いますが、その他にも児童ポルノのような例もあります。これらは一般に相互了解の上で行われている行為です。

(14)税金未納取引
オークションサイトのような個人間の商取引で発生した利益に対して税金を回収することは困難だと言われています。このため、脱税行為が横行し、税金制度の機能が鈍化することが考えられます。これもサービス汚染行為と言えるでしょう。分類としてはタダ乗り(フリーライド)問題に属します。

この二つのサービス汚染行為は法律に触れるという点で行為者にとってもリスクのあるものですが、国家から見ても法が簡単に破られてしまうため危険性の高いものだと言えそうです。

サービス汚染行為の条件と、現在までにサービス汚染行為であると判明しているものを下に再掲します。

【サービス汚染行為の条件】
A. 無差別行為
B. サービス価値低減行為
C. 質的正当行為

【サービス汚染行為】
(0)スパムメール
(1)SPIM(スピム)
(2)SPIT(スピット)
(3)掲示板スパム
(4)トラックバックスパム/コメントスパム
(5)検索エンジンスパム
(6)SNSスパム
(7)SPLOG(スプログ)
(8)広告不正クリック
(9)コンテンツ不正配布
(10)ファイル交換ネットワークスパム
(11)ネットワーク帯域の長期大量消費
(12)リアルマネートレード

サービス汚染行為を分類する観点として、すでに行為の能動性と受動性という切り口を挙げました。能動性を持つサービス汚染行為の場合には、おとり作戦が対策の候補として考えられます。

他の分類の切り口として、行為の相互了解性の有無があります。

(0)スパムメールや(4)トラックバックスパム/コメントスパムなどは送り手が受け手の了解を得ずに一方的に行うサービス汚染行為です。これは相互了解性のない行為と言えます。相互了解性のないサービス汚染行為の第一被害者は受け手になります。

一方、(9)コンテンツ不正配布や(12)リアルマネートレードは送り手と受け手が相互に了解しあって成立するサービス汚染行為です。これは相互了解性のある行為と言えます。相互了解性のあるサービス汚染行為の被害者は、常に行為の第三者になります。

indexサービス汚染行為名能動性相互了解性
(0)スパムメール能動なし
(1)SPIM(スピム)能動なし
(2)SPIT(スピット)能動なし
(3)掲示板スパム能動なし
(4)トラックバックスパム/コメントスパム能動なし
(5)検索エンジンスパム受動なし
(6)SNSスパム能動なし
(7)SPLOG(スプログ)能動なし
(8)広告不正クリック能動なし
(9)コンテンツ不正配布有り
(10)ファイル交換ネットワークスパム受動なし
(11)ネットワーク帯域の長期大量消費能動なし
(12)リアルマネートレード有り


表を整理していて気づきましたが、行為の能動性という切り口は問題がありますね。行為に関わる登場人物の整理を行わなければ能動性の判断があやふやになってしまいます。


ネットワークゲームにおいて、リアルマネートレード(RMT)という行為が問題になっています。ゲーム世界内のお金やアイテムを、現実の世界のお金で取引するというものです。

リアルマネートレードが頻繁に行われると、ゲームバランスが崩れると言われており、リアルマネートレードを行っていないプレイヤーたちが楽しめない環境になっていくそうです。

この行為は下記の3つの条件を満たしますので、サービス汚染行為だと言えます。

A. 無差別行為
B. サービス価値低減行為
C. 質的正当行為

リアルマネートレードはそれ自体を取り締まる法律もないそうですし、法律があったとしても個人間での金銭のやり取りなので取り締まり自体が困難だと考えられます。この点から、Cの条件を満たします。

(12)リアルマネートレード
ネットワークゲームにおいて、ゲーム中のアイテムやお金を現実世界のお金で取引する行為です。現実世界でのお金持ちがゲームの中でも裕福になるため、ゲームバランスを崩し面白みを低下させてしまうという指摘がなされています。

前回、対策フェーズが以下のような段階で進むことを述べました。

【対策フェーズ0】対策なし
【対策フェーズ1】一般ユーザが行わない行為は制限
【対策フェーズ2】一般ユーザがあまり行わない行為を制限(ただし一般ユーザの行為である可能性が高い場合は許可)
【対策フェーズ3】一般ユーザの行為である可能性が高い行為以外は制限
【対策フェーズ4】確実に一般ユーザの行為と認められるもの以外は制限

インターネットを利用したサービスは、不特定多数のユーザの参加によって高い価値を生み出していると考えられます。このため、汚染行為者は別にして、ほんの少しでも一般ユーザの利用行為が制限されるようなことになると、インターネットを利用したサービスの価値が大幅に低下する恐れがあります。

例えば電子メールは非常に便利なサービスですが、例えば迷惑メール対策のために、せっかくメールアドレスを交換したのに、お互いにメールのやりとりができないとしたら、非常に不便なサービスになるでしょう。

このため、現在のインターネット上の汚染行為対策の多くは、ほとんどが【フェーズ1】の段階にあるように思われます。しかし迷惑メールのように汚染段階がLevel.4に達しているようなものに対しては、【フェーズ2】の段階に入っているようです。例えばOP25Bやベイジアンフィルタによるスパムフィルタなどはその典型です。


// HOME //  NEXT
FC2ブログ
Powered By FC2ブログ. copyright © 2005 ヤナガワセキュリティ研究所 all rights reserved.
プロフィール

Author:ヤナガワ
ネットワークセキュリティの直接テクニカルな面よりも、理論的な部分に興味を持っています。
セキュリティ技術をどう評価すれば良いか、政府のセキュリティ政策や関連団体の活動は何に基づいて行うべきか、などを考えていこうと思ってます。

リンク
最近の記事
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
RSSフィード
FC2カウンター

PR